コラム・人間ドック学会発表の健康診断の新基準について

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人間ドック学会発表の健康診断の新基準について

2014年5月

2014年5月 日本人間ドック学会が血圧やコレステロールなどの健康人の基準値を発表し、いろいろなマスコミに取り上げられ問題となっています。より権威のあるそれぞれの専門分野である日本高血圧学会や日本動脈硬化学会などと基準値が異なっており、誤解を解くためにその点を解説したいと思います。

『人間ドック受診者約150 万人から「健康人」として約34 万人が抽出。さらに約7分の1の集団を取り出した上、約1万~1万5千人の「超健康人」を選び、27項目の検査値を対象に、性別、年齢グループ別 (30~44歳、45~64歳、65~80歳)の「基準範囲」を求めた。』と日本人間ドック学会の発表に書かれています。ここでの「健康人」の定義は上記の米国の基準で判定したと記載されていますが、ここで血圧の基準値と肥満の基準値であるBMIを外して解析したとしています。米国の健康人の基準値に含まれる項目を勝手に外すのは問題があるのではないかと思います。

ここで考えてみましょう。血圧が200mmHg程度や総コレステロールが300mg/dl程度あっても病気を起こしておらず、治療も受けていない方は少なくありません。そのような方もこの人間ドック学会のいう「健康人」となります。当然血圧が200mmHg程度や総コレステロールが300mg/dl程度の方は現在は脳卒中等病気を発症していなくとも将来の危険性は高くなります。

医療としては現在は脳卒中や心筋梗塞を起こしていなくても、今後起こす危険の高い方を見つけて起こしにくくすることが重要です。実際下記の図の様に30歳以上の日本人約10000人を14年間追跡調査すると血圧が120/80以上で脳卒中の危険度が上昇し、140/90以上では男女とも明らかに脳卒中の危険度が高いことが分かります。そして、そのような危険度の高い方を血圧の薬を服用してもらい治療すると脳卒中が約4割減少することが18000人の約4年間の追跡調査で報告されています。

日本高血圧学会や日本動脈硬化学会などはこのような信頼できる疫学研究の結果から基準値、治療指針を決めています。現時点の「健康人」から算出した基準値とは質の全く違うものと思われます。

マスコミ報道に惑わされることなく、必要治療を中断することのないようにしましょう。ご質問のある方は診察時にお聞きしますのでよろしくお願いいたします。

坂口医院 内科・循環器内科
坂口 好秀